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昔っからカッとなるとすぐに暴力を振るようなやつだった。周囲の同級生からは常に根も葉もない噂や悪口を言われ、大人からは「お金もちだから怪我をさせても大丈夫だからあの子は人を殴っている」と言われ、ついたあだ名は………暴力装置だった。
小学4年生の頃、桜がまだ見所の時期には既にうちの学校は始まっていた。
一週間も経てば一通りのグループ、並びにカーストが作られる。もちろん、暴力装置というあだ名をつけられた俺に構うやつなど居らず最底辺カースト、ただ一人で本を読み続けていた。
そして、俺と同じように一人でいるやつがいる。そう、ちょうどクラスに戻ってきたやつだ。あいつは確か…悠野桜だっけか。よく聞いてみるとトップカーストの会話の一部は悠野の身長、家柄、そして存在そのものへの悪口だった。
学校が始まって間もない頃、トップカーストの男子数人と悠野が放課後、先生に呼び出されていた。恐らく、悪口のことについて呼び出されたのだろう。
「アホくせぇ」
まだ明るい太陽が差し込む暖かい教室で、一人呟いた。
数十分後、心地よかった静寂は終わった。呼び出された男子数人と少し遅れて悠野が教室に戻ってきた。
「何だよ、あのクソ野郎。別にこんなやつどうだって良いだろ。な?」
リーダーらしきやつが取り巻きABCに投げかける。
「ほんと、それな?」
「「なー」」
下品な声で笑う声は実に耳障りだ。
やはり悪口を言っている。反省せずに戻って来たのか?余計うっとうしい。
たが、確かに悪口は素晴らしい。人類全員が持つ数少ない共通項だ。悪口さえ言っていれば誰とでも仲良くなれる。むしろ、明確な敵の存在がでてチームワークが上がるまでである。
でも、
「気色悪い」
小声で、聞こえない音量で言った。
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