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翌日、また悠野は悪口を言われていじめられている。しかし、今日はそれだけではなく悠野に対して直接的な暴力を加えようとしている。理由は、授業中に悠野が褒められたからだ。…理由がアホすぎんだろ……。
それと同時に困ったことがある。それは、悠野が助けを呼ぶことだ。昨日、あいつが勝手に納得したせいでもし助けを求めた場合、俺が助けないといけない。まぁ、こんな捻くれた性格をしていてなにを今更って感じだけど、俺には俺なりのプライドがある。
なんてことを考えてるうちに男子たちは悠野に手を挙げ始める。
まずは一発。パンッと控えめな音が騒がしい部屋に響く。その音はすぐに喧騒に掻き消される。だが、それはどこかで響き続ける。
悠野は後ろにいて表情は伺えないが、どんな表情を浮かべているのか容易に想像できる。
無意識に歯を食いしばってしまう。
「やめて、助けて」
離れる言葉は一つ、また一つと喧騒に掻き消されて行く。そんな中、小さな声で、今にも消え入りそうな声で、放たれたその言葉だけが確かに聞こえた。
男子から次に繰り出される手を、俺は立ち上がり、受け止める。
「やめろよ」
低いトーンでそう言って俺は悠野を叩こうとした男子らのリーダーを睨みつける。するとそいつは俺のことを嘲笑うような目して言い返してくる。
「はぁ?お前には関係ないことだろうがよ、暴力装置がっ…」
「関係ある」
相手が最後まで言い切る前にその言葉を断ち切る。
「じゃあ、何ですかぁ?」
煽るように体をクネクネとさせて問いかけてくる。
「…まともな理由もなしに人を殴るような奴に教えるか、バーカ」
…自己紹介やん。
そんなことにバカABCDが気付くはずもなく激情して俺の両手を掴み、殴り始める。
一発目。
「ぐはッ!」
痛みが腹部に流れる。
二発目。
「うぐッ…」
腹部を通して体全体に痛みが走る。
反撃しようと思えばできたのに、なぜかしなかった。
多分、満たされていたのだと思う。いつもは悪として扱われる俺が、正義の行いをしていることに……。
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