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知らぬ間に目からは涙が溢れ出ていた。止めようとしても、止めようとしても、涙は止まらなかった。
そんな俺を見て何かがおかしいと思ったのか先生は悠野に鍵を渡し、「柳を心の教室まで連れてってくれ」と言った。
その言葉に悠野は頷き、俺の腕を掴んで、ゆっくりと教室を後にした。
教室前まで来ると冷静さを取り戻してくる。そしてわかったことがある。
……くっっそ恥ずかしい。
いや、みんなに見られるのも恥ずかしいが、それよりも、悠野にここまで連れてこられたのが一番恥ずかしい。
「…入らないの?」
ドアの鍵を開けて悠野は俺に尋ねた。
「…入るよ、暑いし。でも、その前に顔洗わせてくれ」
ここから一番近い水道に行く。顔を洗っているときに授業時間を告げるチャイムが鳴る。それを聞いて、足早に心の教室に戻る。
その場にはわざわざ部屋に入らずドアに背を預けた悠野がいた。
「入っててもよかったのによ、先に」
「まぁ、良いじゃんか。入ろ?」
部屋にはマットが敷き詰められており、中のドアの隣にある下駄箱に下履を入れる作りで、中は電気を点けても薄暗さが残る部屋となっている。窓から入る日光は埃を露わにして、掃除が行き届いてないんだなと思う。
「…私は、子供は子供らしい方がいいと思うな」
「ん?」
唐突に悠野が俺に話しかける。
「シュー君はいつも大人びて見えるしさ、もう少しだけ、子供ぽっくしたら良いんじゃないかなぁ?って…話し……あ、でも君が君らしくいたいって言うなら、もちろんそっちが良いよ」
今は、今だけは、どうしてもそれが俺の生き方を否定しているように聞こえる。俺の存在を否定してるように聞こえる。
だけど、頑張ってその言葉の真意を理解しようとする。
何回か考えたが、答えはこれしか出なかった。
一度、空気を吸って吐く。
「お前に言われなくてもわかってるよ、そんなこと。それに、そんなのお互い様だろ?」
俺は悠野に笑いながら言うと、悠野は驚いたような表情を浮かべる。
「初めてみた。シュー君が笑ってるところ」
そして彼女は、嬉しそうに微笑んだ。
これが俺と桜の馴れ初め……なハズ。
ちなみにこの後は、俺に対しての陰湿なイジメは「親も関与したイジメ」と、一時期ニュースで話題となり、それ以降は俺らの学年ではイジメは無くなった。
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