4. 痛いのは、はんぶんこ

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出勤後、制服に着替えるために更衣室に行くと、人事部の同期が着替えているところだった。 「おはよー」 「あっ、おはよう!‥‥ねぇ、聞いた?あんたの元彼、最後の出張で今週こっちに来るらしいよ」 「えっ‥‥」 「会議で本社にも来るらしいから、会うこともあるかも。‥‥気を付けなよ」 元彼―――2年前に別れた元彼のことだ。 同じ会社の営業部で、3年半ほど付き合っていた。うちの両親にも挨拶してくれて、「いつか結婚しよう」なんて約束もしていたんだっけな。 けれど結局、向こうの浮気が原因で別れた。浮気相手は、出張先で出会ったという、不動産会社の社長令嬢で、それはそれは綺麗な若い女性だった。 出世欲の強い人だったから、婿養子に入って、そこの会社を継ごうとでも思ったんだろう。 実際、うちの会社を今月で退社すると、風の噂で聞いたから、うまいこと結婚までこぎつけんだろうな。 私と別れてすぐ、あっちは地方の支社に異動になったから、顔を合わせることもなくてせいせいしていたのに。 別れる時、向こうの浮気を責めたら逆ギレされて、結構な暴言を吐かれたから、もう二度と会いたくないんだけどな‥‥。 「‥‥わかった。気を付ける‥‥」 ―――まぁ、「気を付ける」なんて言ったって、社内で顔を合わせるのを防ぐことなんて難しいんだけど。 そう思っていたら、案の定。昼休みが終わり、部署に戻る途中、エレベーターホールでばったり元彼と会ってしまった。
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