1. 出会いはゴミ箱のそばで

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1. 出会いはゴミ箱のそばで

ある夜の帰り道、ほろ酔い気分で歩いていたら、メンヘラのバンドマンを拾いました。 「‥‥ぼくなんて、ぼくなんて生きていちゃ駄目なんだ‥‥ぼくなんてみんなに嫌われる存在なんだ‥‥みんながぼくを笑ってるんだ‥‥みんながぼくを嘲笑って‥‥うっ、うぅっ、えっ、えぐっ‥‥‥‥うわ――――ん!!!」 (‥‥うわぁ、めちゃくちゃ病んでるなぁ‥‥) 夜22時過ぎ、居酒屋が立ち並ぶ飲み屋横丁の一角。 飲食店用のゴミ置き場で、たくさんのゴミ袋に埋もれて、体育座りをして泣きじゃくっている男が一人。 髪をほぼホワイトヘアにまで脱色して、耳のみならず顔面にもピアスを開けているその男は、たいそう目立っておりました。          ★ 時間は少しだけ遡って、小さな焼き鳥屋の店の前。 せっかくの金曜日なので、私はこの店で軽く一人飲みしていた。 独身アラサーのしがないOLである私にとって、この週末の一人飲みの時間は何よりの楽しみだ。 時間が遅くなるにつれ、店も混んできたので、ほろ酔い気分でお会計をして、店を出た。 (‥‥テイクアウトの焼き鳥も買えたし、良かったー。帰ってまた一杯やろうかな) 上機嫌でそんなことを思いつつ、「ありがとうございましたー!」という店員さんの威勢の良い声を背に、ガラリと店の扉を開けた。 ―――そして、駅の方向に数歩足を進めたところで、私はびくっと足を止めた。
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