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とにかく、あまり関わり合いになりたくないし、そっと通り過ぎて帰ろう。
そう思い、そそくさと男の前を通り過ぎ、路地を進もうとした。
―――けれどその男は、泣いている割に周りをよく見ているのか、私が通り過ぎる瞬間、またブツブツと声をあげ始めた。
「‥‥そうだよね‥‥みんな、こんなぼくのことは怖いよね‥‥近寄りたくないよね‥‥こうやってぼくはみんなに遠巻きにされて生きていくんだ‥‥こうやってぼくは孤独になっていくんだ‥‥」
(‥‥うわぁぁぁ、めんどくせぇぇぇ!!)
ちらちらとこちらを伺いながら、またポエミーなことを呟きだしたその男に、一瞬イラッとしてしまう。
見るからに面倒な「構ってちゃん」タイプのようだし、触らぬ神にたたりなし、一刻も早くこの場から離れたい。
どんなに構ってオーラを出したところで、話しかけてなんかやらないんだから―――。
‥‥そう思っていたはずなのに、すれ違いざま、ちらりとその男を見た時、大きなガラス玉のような瞳と、目が合った。
まだ涙に濡れたままのその瞳は、見たことがないくらいキラキラしていて、綺麗なものに思えた。
(‥‥ああぁ、もう。しょうがないなぁ)
ほろ酔い気分で、気が大きくなっていたのもあるかもしれない。
つい私は、その男に近付いて、話しかけてしまっていた。
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