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「‥‥どうしたの?失恋でもした?」
するとその男は、その大きな瞳で私を上目遣いに見上げて、ふるふると首を横に振った。
「‥‥ちが、う‥‥きょう、ライブで‥‥おっきなミス、して‥‥」
あぁ、やっぱりバンドマンなのか、と思いつつ、相槌を打って話の先を促す。
「‥‥お客さんに、もうしわけなくてっ‥‥メンバーにも、おこられ、て‥‥ぼくなんて‥‥ぼくなんて、だめなとこばっかりなんだぁぁぁぁうわ―――――ん!!!」
「あああ、わかったから!!!泣かないで!!!」
話しているうちに、また感極まって大声で泣き出したその男を、私は必死に落ち着かせた。
泣かないで、泣かないで、と言いつつ、何度か背中をさすってやると、その男は少しずつ泣き止んでいった。
「‥‥ミスねぇ――‥‥音楽のことはよくわからないけど、どんな仕事でもミスはあるでしょ。人間だもの」
「‥‥みつを‥‥?」
「いや、そこ突っ込まなくていいから。‥‥反省するのは大切だけど、ミスする度にそんな絶望してたら、身が保たないよ」
そう言って、励ますようにポンと肩を叩くと、その男はぱちぱちと目をしばたかせて、私を見つめてきた。
あぁ、やっぱり端整な顔をしているし、何より目が綺麗だなぁと、改めて思う。吸い込まれそうなほど大きくて、深い色をした瞳。
ずいぶん年下っぽいし、何より3Bで有名なバンドマンだから、恋愛対象って訳じゃないけど―――と、あらぬ方向に思考が転がりかけて、慌てて首を振って雑念を振り払う。
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