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焼き鳥屋から少しだけ歩いたところに、小規模な公園があったので、二人でそのベンチに腰を下ろした。
もう夜も遅いけれど、繁華街だから、公園にはダンスの練習をする若者たちがちらほらいる。
そんな若者たちをぼーっと眺めていると、男はパックを膝の上に置いて、嬉しそうに焼き鳥を眺めた。
「ほら、好きなの食べなよ。どれがいいの?」
「‥‥すなぎもと、ねぎま‥‥」
「あ、そう。じゃあ、ももとレバーは私ね」
そう言って、私がももの串を取ると、男も安心したように、ねぎまの串を手に取った。
何を考えているのかよくわからない子だけれど、もしかしたら多少は遠慮していたのかもしれない。
「‥‥いただきます」
律義にそう言って、男は嬉しそうに焼き鳥をほおばった。
もぐもぐと口を動かす姿は、まるでリスか何かのようで、見ていてちょっと微笑ましくなる。
「そういえば、名前はなんていうの?」と尋ねると、男は「ルイ‥‥」と答えた。
「ルイくんは、」
「‥‥ルイでいい‥‥」
「あぁ、そう。‥‥ルイは、バンドやってるの?」
「うん。‥‥お化粧して、うたう‥‥」
あぁ、そっち系のバンドか、よく知らないけど‥‥と思いつつ、「へー、そうなんだ」と相槌を打った。
顔が綺麗で女の子みたいだから、メイク映えするだろうし、さぞステージ映えするんだろう。
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