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「……人は、不思議な生き物よ。他の生き物は願いがあれば胸の内に秘めているだけなのに、人はその願いを外に出し、叶うことを夢見るの」
返事も寄越さない僕をよそに、神サマは話し始めた。いや、語り出したという方が適切だろうか。
とにかく、神サマはポツリポツリと、一つ一つの言葉を丁寧に、どこか悲しげに、声をこの空間に響き渡らせた。
「その願いは目に見えない空気のように、世界中のどこにでも存在するわ。そしてその願い、あるいは思いが集まって形を成したものが、神様という、人間にとって象徴を意味する存在なの。
それは、あの世もこの世も関係ない。人間は欲深く、罪深い。だからこそ、こうして思いが集まって、形を成す所まで溢れかえるの。
そして、私もその一人。この場所で生まれ、ここから出ることすら叶わない弱い神様だけれど、ちゃんと力はあるわ。
その力とは、私たちが生まれた理由。願いを叶えてあげるという、力」
そこで神サマは、一旦息をついて僕を見た。
「この場所は悩んでいる人しか来ることができない、そしてあなたはこの場所にいる。
叶えてあげるといっても、力を蓄えないといけなかったから今までできなかったけど、もう十分、私は力を蓄えた。
今まで何も言ってあげることができなかったけど、これでやっとこの言葉を言えることを、私は嬉しく思うわ。
あなたは案外おもしろかったから、もう別れてしまうのはとても辛いけれど……敢えて言うわね。
願いを、述べなさい」
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