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十数年ぶりの由姫もあの頃に負けず劣らず、とても可愛く、愛おしい。
「……あ、あの話、聞いてたの?」
「うん。だから、今度は由姫の番だよ。どうしてあの男と付き合っているなんて言ったのか、どうしてあんな行動をとったのか、教えて」
男が自分の事が話に出されたからか、こちらに近づき腰を下ろした。白い神サマの隣に黒い男が座ったので、オセロみたいだな、と僕は心の中でふと思った。
「……私ね、麻耶が死んで、麻耶を忘れられないから麻耶を忘れることは諦めて、仕事に生きてきたの。会社では、『女を捨てた』なんて言われていたわ。そしてある日、誤って川に落ちてしまってそのまま死に、天国へとやって来た。
私は真っ先に麻耶を探したわ。再会できるかもと思って、一心不乱に探し回り、そしてあるとき、ふと足を止めた。十数年が経つもの、あなたの隣に誰かがいてもおかしくない。あの女の子だって、本当に浮気をしていて、私のことなんかとっくに忘れているのかもしれない。
不安に足が進まずベンチに座った私に、声をかけてきたのが、そこにいる男。黒江よ」
由姫は振り返って黒江を見、また僕の胸の中に顔を埋めた。
「彼は自分を『悪魔』だと言った。最初は信じられなかったけど、契約内容がふざけていたから、すぐに契約を結んだわ。契約の一年後までに達成できなかったら、あなたの命を食べるって話だったけど、こんな心優しい悪魔にだったら自分の命を差し上げてもいいと思った。
ちなみに、契約は明日で切れる。私と彼との契約は、あなたのおかげで無事、達成された」
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