初めまして。

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初めまして。

この世の中には沢山の「初めまして」が溢れている。 そして私は人生において、何度目かの初めましてを今日、経験する。 高校を卒業して小さな広告代理店に就職した。 うちの会社では大手の広告代理店と提携していて、所謂(いわゆる)、下請けみたいな状態になっていて定期的に小さな仕事を回して頂いていた。 新入社員で経験不足の私にその仕事には縁はなかったが、入社して4年目、その仕事のチームに入った。 初顔合わせで飲み会に行き、大手広告代理店、エリート軍団の仕事の話に夢中になり目が輝いた。 「担当、初めて?」 声を掛けられて舞い上がる。 「はい!あ、名刺、良ければ…。澤井(さわい)秋生(あきお)と申します。以後お見知りおきをお願いします。」 「はは…あきおさん、担当メンバーの名前見た時、男性かと思った。 女性がいて驚いたよ。よろしくね。責任者になります。 名刺、良ければ…。」 名刺を受け取り、お名前を確認する。 「頂戴します…。秋月(あきづき)了公(りょうこ)さん…。」 目の前の秋月は大笑いする。 「ごめんごめん。実はそれ、「りょうこう」って読むんだよね。俺も良く女性に間違われる。名刺にも小さく英語で載せてあるよ?同じ季節が入ってるね?」 名刺をガン見した。 「秋月(あきづき)了公(りょうこう)さん…。失礼しました。同じ季節……本当ですね。」 お辞儀をして謝った。 お互いの顔を見つめ合って、くすりと笑った。 これが大手広告代理店、絶対逆らえない上の会社の担当者、秋月との初めましてだった。
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