エピソード14…秋雷、現在

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保育園の夏休みも明日終わるという日。 少し早い台風が近付いていた。 秋月は盆休み明けから9月のCM撮影で忙しく奔走していて、あの旅館にいく事も増えていた。 部屋に来るのも2日に一度になり、夏が終わる頃には4日置き位になっていた。 「然。秋月さん今日はお泊まりだって。お仕事。然によろしくって。」 それが仕事である事は秋生も理解してはいたが、心の隅で、もしかしたらこの間、断る様な態度を取ってしまったから避けられているのだろうか、などと考えてしまう。 「えぇ〜!りょう、お夕飯も来ないし、ぜんぜん遊べない。つまんないよ。」 「しょうがないでしょ?お仕事が忙しいの!それに秋月さんはお家がちゃんとあるんだから…。」 台風が近くを通るかもと聞いて、停電などに備えて早目に帰宅して夕食を二人で食べた。 「もうお風呂も入るよ?夜に電気消えたら怖いから…。寝間着持っておいで。」 二人でお風呂に入ると、然は秋月と一緒に入った温泉が広くて楽しかったと話してくれる。 「良かったね?」 「うん!……なぁ、秋生。」 「うん?どうしたの?」 「りょうは、おれのお父さんにはならないの?いっしょにここにいたらだめなの?」 ドキン…とした。 「…お父さんが欲しいの?」 「ちがうよ。かんちゃんはいないけどずっといるもん。かんちゃんはおれのお父さんでしょ?」 「…うん。」 「でもねー。りょうは、りょうのお父さんなんだ。べつのお父さん。 りょうね、秋生のこと、ふたりで守ろうねっていってくれたんだ。 おれね?秋生を守ってほしいんだ。」 思わず、涙が出た。 お湯の中に顔を浸けて、誤魔化した。 (然の中に、かんちゃんがいる。優しくて温かい…かんちゃんがいる。) そう思ったら、かんちゃんが消える事はないんだと思えた。 暫く涙は止まらなくて、然はオロオロして心配してくれた。 いつも暴君な癖に……可笑しくて途中から泣き笑いになった。 お風呂から上がって、着替えをさせながら然に話した。 「秋月さんの今のお仕事が落ち着いたら…然のお父さんに、秋生の旦那さんになってもらえるか聞くね?駄目だったらごめんね?でも、駄目な時は然が悪いんじゃなくて秋生が悪いから。」 黙って聞いていた然は、ポツリと言う。 「秋生、かわいくないから?むねがないから?ぼうりょく女だから?」 吹き出しそうになるのを堪えて、よく考えたら失礼だなと思い、然を抱きしめてくすぐった。 「どう言う意味よ!こら!然。誰が暴力女だって?」 「きゃぁぁぁ〜〜やめてぇ〜。ぎゃはははははっ…きゃ、きゃぁ〜いやぁ〜〜。だめぇ〜おもしろい〜〜。」 戯れて遊んでいたら、窓の外が光った。 二人同時に停止した。
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