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慌ててテレビをつけると、台風が1番近付くと言う時間にはまだ余裕があった。
風は確かに然程吹いてはいなくて、強い雨音と稲光と大きな音。
「かず…数、数えよう!ピカッて光った後に数を数えて、ゴロゴロていう音が時間が掛かれば遠くの証拠なんだよ?遠くなら光っても怖くないからね?」
ピカッ!から、
「いち、に、さん。しぃ、ご、ろく…な、な………。」
ゴロゴロゴロ………。
二人で顔を見合わせる。
「秋生…ななはとおいの?」
「五よりは遠い。でも、十まで数えたかったな。」
「もう一回やろ?」
「う、うん…そうだね。」
ピカッ!
「いち、にい、さん、しー、ごっ…。」
ゴロゴロゴロ……ドシャーン!
「秋、秋生!ちかくなってる!」
然を抱きしめながら大丈夫を連呼した。
でも、大丈夫じゃなかった…。
ここから雷は真上でなってませんか?と、聞きたくなるほど、近い音で鳴り出した。
ゴロゴロなんて可愛い音はなく、勿論あるけど…それすら気にならない。
ピシャ〜ン!!
ドン!!
ドカーン!!
爆弾でも落ちたの?と思うほど大きな音が近くでする。
窓の外はチカッ、チカッとその度に光った。
「あきお〜〜〜。おへそとられちゃう?家、もえちゃう?」
テレビの前で抱きしめ合っていたが顔を伏せたまま、秋生にしがみついて然は震えていた。
「だ、大丈夫だよ…。そりゃ…雷が落ちてぼやとか聞くけど…ぼ、ぼやだし。
あ、然!上から上着、着ようか?」
「暑い!」
「じゃあ、持ってこよ?」
然に言われて火事が怖くなった秋生は、いざという時の為に逃げる準備をしようと思った。
動こうとすると雷が鳴る。
「きゃぁ!」 「いやぁ〜〜!」
「秋生!うごいちゃいや!!」
「だ、大丈夫…。あ、かんちゃん、かんちゃんにいてもらおう?ね?」
二人でズルズルとかんちゃんの写真を取りに行く。
雨戸は台風が来ると聞いて閉めてあったが、窓の近くにかんちゃんがいるので、奪う様に取り、また和室の真ん中に戻る。
その間にも光ればビクッとして、音がすれば悲鳴が上がる。
「か、かんちゃんいるし…ね?」
「かみなり…いつまでなるんだ?」
「こんなに長いのも…近いのも…初めてかもしれない…。きゃぁぁ!」
然に写真を渡して、膝の上に顔を置いた然を上から抱きしめた。
次の瞬間、パッと………電気が消えた。
「嘘………。」
電灯を見上げて呆然とした。
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