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「あきお〜!おれ、おれ、こわくな………い〜〜〜〜!!」
然が言う間にも雷は派手に鳴っていた。
台所の窓は雨戸がないので、稲光はよく見えた。
然に写真を抱かせて、懐中電気だけを取りに行った。
使っていた電化製品は電灯とテレビだけだったので、テレビを消した。
電灯は復旧したら分かる様にそのままにした。
その間も雷はサービス満載で音を立てていて、その度に耳を塞いでビクッとしていた。
「すぐ点くよ…。」
と言っていた電気は30分経過しても点かず、雷はいつまでも頭上に居続けていた。
「雷さま…サービスはもういいですぅ……。」
然を抱きしめながら光る窓を見つめた。
台所の外に…稲光が影を映した。
「きゃ………む?むぐ。むむお?」
悲鳴を出そうとした然の口を横から手を出して秋生は塞いだ。
不思議そうに然は半泣きの顔を上げた。
「しーっ…。お外に誰かいた。フードみたいなの被ってたぽいから、お隣かもしれないけど……。」
小さな声で話している最中にも遠慮なく雷は鳴り響いて、その度に二人の体がビクッと反応していた。
「こんな音してたら、ドアを壊されても窓を破られても気にならない。
泥棒さんかもしれない……。」
「おれ、剣…。」
「しー。」
時々、稲光で映される動く影を秋生はじっと見ていた。
「然、これ!警察は110、覚えてるね?もし、危ない人が来たら、お母さんが戦っている間にどうする?」
スマホを手に握らせて聞いた。
「と、トイレにかぎかけて、しずかにして110に電話する。」
「うん、いい子。絶対に鍵を開けちゃ駄目。いいね?かんちゃんと一緒に逃げるんだよ?」
「あき、あきお!ここにいて!雷、嫌ダァ!!」
「しー…。秋生も嫌だよ。鳴り続ける雷はないから、さすがにそろそろ雷さまも疲れてくる。きっと終わる!ね?然はちゃんと逃げるんだよ?」
立ち上がって見に行こうとすると、また雷が鳴る。
然は秋生の足にしがみ付く。
「やめて!ここにいて!!秋生がけがする!いやだぁ〜〜!」
大きな声で泣き出した瞬間、部屋のドアが叩かれた。
「秋生?然!いるか?起きてるか?秋月だけど、大丈夫か?」
二人で顔を見合わせて、震えている然を抱いて玄関迄行き、恐る恐るドアを開けた。
秋月の顔を見たと同時に、外の稲光と音を聞き、二人で秋月に抱きついた。
「りょう〜。おれ、もういやだぁ〜。」
「きゃぁぁぁぁ……。」
「取り敢えず入れてもらえる?」
笑いながら秋月が言い、部屋の中に入ってもらった。
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