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和室で秋月の足にしがみついて座り込む然…。
秋生は玄関で脱いだ秋月の雨合羽を、その場に簡単に干して大きなタオルを取りに行き秋月に渡し、飲み物を取り行き三人分ペットボトルごと持って来て、和室に座った。
「然、飲まない?喉乾いてない?」
30分以上、きゃあきゃあ言っていたから、秋生も喉はカラカラだった。
「きゃっ…。もう…また……。」
真上か?と思うほどの音は無くなったが、それでもまだ大きな音だ。
「りょう…おれ、こわ、こわくないぞ?」
こわく、で光ると然は怯む。
「怖くていいんだよ?自然には大人でも勝てない。りょうもここまで来る間、凄い怖かったよ?」
然を膝に乗せて話す。
「ほんと?」
「うん。凄く怖かった。目の前で光が見えるし音は凄いし。でも、ここ近くなって周り中、電気が消えてたから、然と秋生が心配で夢中で来た。
一人なら怖くて外には出れないよ?二人とも雷、苦手だったなって思ってさ。」
秋月が話す間にも、二人はビクッと身体を反応させていた。
「今日は泊まりですよね?どうして…。」
稲光を見ながら秋生は聞いた。
肩からバスタオルを掛けて、然を膝に乗せて頭を撫でながら秋月は答えた。
「台風のテレビを見ながら仕事してて…。来る前に帰ろうって話になってね。
電車も止まるかもしれないから他はもう帰っていたけど、数名残っていて。
地域の天気を見たら落雷注意なんて出てるから気になって。
すぐ電車に乗って、降りたら雨が降り出してて、駅出たとこでカッパ買って走って来たんだけど……怖かったよ。家に真っ直ぐ帰っても一人だし、二人が心配だったし…別に俺が居ても雷からは守れないけどね?でも……一緒に怖がって、落ちた時に然を庇う事は出来ると思ってさ。」
「然……を?」
真っ暗な部屋で、目に涙を少し溜めた秋生が聞き返す。
「うん。そういう時、秋生は然を庇うから…二人で然を守れたらいいかなって思ってさ。」
雷がドン!と音を出したと同時に秋生も秋月に抱きついた。
「大丈夫だよ?大分、遠くなって来た。」
秋月の首に回した手を少し緩めて離れる。
「うん…もう、怖くない。秋月さん、来てくれたから…。」
真っ直ぐに秋月を見て、秋生が言う。
「泣いてる?」
「うん。嬉しいし、悲しいし、怖いし、ぐちゃぐちゃになってる。」
「大丈夫…俺、ぐちゃぐちゃは得意だ………。」
稲光の中、二人の影が重なった。
秋月は然の目を手で覆っていた。
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