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智子が帰り、秋月と然が楽しそうに二人でお風呂に入っている。
後片付けを終えた秋生は、かんちゃんの横になった和室にそっと寝転ぶ。
どうして自分が秋月に対して、躊躇していたか…今ならはっきりと分かる。
余りにも短過ぎたから。
籍を入れて、時々帰って来るかんちゃんとこの部屋で過ごした時間は短くて、それ以上の時間を他の人と過ごす事に罪悪感を持った。
(かんちゃん、もう気にしないよ?私のこの5年間は、かんちゃんと同じ…ずっとかんちゃんと一緒にいて、時計は止まってた。
時計は動かさないとね?然は大きくなるんだから。
これからは、かんちゃんを想いながら、然と了公さんと…時計を進めていくね。ずっとかんちゃんが大好きだよ?今日からまた、見守ってね。)
「秋生〜!然が逃げるよ〜!」
その声でがばっと起き上がる。
バスタオルを手に取り、走って来た然を捕獲!
「もう!床、ビショビショになるでしょ!頭も!ちゃんと拭いて!」
「ぶぅって…お風呂でぶぅって……。」
楽しそうにケタケタ笑い、然が言う。
「あ〜!了さん!」
「然、ばらすなよ〜。お母さんに嫌われたらどうするんだよ?」
パジャマを着て、髪をガシガシ拭きながら、秋月が出て来る。
「そんな事で嫌わないけど!然が逃げた事は怒れないわ。」
と、秋生が言うと、すまん…と然に言い、抱きしめた。
籍を入れた次の日に、博報社には報告をしたらしく、一気に会社はその話題で持ちきりになったそうだ。
話の感じは、「あの、仕事ばかりしていた制作の秋月が、出入りの歳下女性と結婚した。」というものだったらしい。
「大丈夫?」
と聞くと、
「好きに言わせておけば良いし、仕事には支障はないよ?石田のガックリした顔が見れた事が満足だね。」
と、秋月は笑っていた。
秋生も変わらずにt.a企画で働いている。
微力だが、かんちゃんの様に会社に感謝される社員になりたい、と言う思いを秋月も理解の上、協力してくれる。
離れて暮らす智子の助けを借りながら、夫婦共働き。
春になり然の入学式には夫婦で出席した。
秋月 然……然も新しいスタート。
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