秋雷〜ハッピーエンド

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「何を食べて帰ろうか?」 入学式の帰り、手を繋ぎ秋月は然に聞いた。 「んー?秋生が食べれるの!今、げぇ…するから。」 「えっ?」 然の言葉に首がおかしくなりそうな速さで、秋月は秋生の方を向く。 「然!しーだってば!!」 口元に指を当てて然に向かい、少し屈んで言う。 「秋生? もしかして?」 「んーまだ内緒にしときたかったなぁ…。」 「なんで!!」 「だって来週から冬のファンデの仕事で博報社に行くんだもの。絶対、オロオロするでしょ?了さん。」 「す……するに決まってるだろ?え?本当に?」 「うん、一昨日、病院に行ったの。2ヶ月だった。」 「えぇぇぇぇぇ!早く教えてくれよ!然も!内緒はひどいぞ!」 然を抱き上げて抱きしめる。 「然もお兄ちゃんだな。頼りにしてるぞ?」 然を下ろして、秋生と手を繋がせる…右手に然、左手に秋月。 「然、お母さん、しっかり捕まえてて。」 「うん!りょう父ちゃんも、秋生、捕まえててね。」 「ふふっ…両手に花?私、凄い幸せ者かな?」 かんちゃんがくれた幸せと、了さんがくれた幸せを私は抱きしめる。 ぎゅうぅぅぅ……と。 夕立ちの突然の出逢いから、雷が落ちるスピードみたいに沢山の事が通り過ぎた。 残ったのは、手の妬ける暴君と周りの暖かさ…僅かな寂しさ。 そしてまた、雷が落ちるスピードで出逢った優しい人。 大事にして生きていこうと思う。 雷の様に、きっと一瞬の人生だから…。 ーー 完 ーー 2019、9、29
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