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「本当ですか?」
「はい、アポを取れるかは分かりませんが、取れたとして、相手のスケジュールを抑えるのはかなり難しいので、撮影は半年以上先になると思います。というか、絶対、先です。後…この予算では結城さんは受けて下さいませんので、予算アップのご相談をお願いします。
結城さん以外でも有名人となると、この倍は欲しいかと…。
ご希望に添える様、有名人でデパートに会うイメージの方を何人か当たってみますので、予算の方は上げる様に、よろしくお願いします。」
上げるのは当たり前の様に秋生は頭を下げてメモを取る。
笑顔で秋生が言うと、担当者は慌てた。
「時間ないんですよ?半年!そんな掛かったら困りますよ!」
「でも、有名人の方は其れ位前からじゃないとスケジュールはもらえません。
写真だけとはいえ一日掛りですし…。有名人…がご希望ですよね?」
伊藤は笑顔の怖さを始めて実感した。
「いえ……間に合わないと、困ります。そこそこ、少し有名な方!デパートのイメージに合う清楚で可愛らしい方、お任せします。」
「そうですか?では…伊藤がリストにあげました、こちらの中からお選び頂ければ…。
全員、スケジュールは確認済みだそうですから、伊藤渾身の一押しメンバーです。」
伊藤は慌ててファイルを出し、広げて中の写真を見せた。
担当者はその中から、第一希望、第二希望を選んでくれた。
その場で連絡をし、第一希望のモデルで決定したのだった。
「駄目です、無理です…では駄目だという事が分かりました。」
「向こうもデパートの担当者で窓口でしょ?間に合わないで困るのはあの人だし、そこはうちと同じ立場だからね。」
「俺…舐められてましたか?」
「ううん…。多分、何を言っても何とかしてくれるんだろうと思ってた。そういう雰囲気、出てたもの。」
困った顔で、秋生は笑い、答えた。
「広告屋は何でも出来る訳じゃねぇ〜〜。」
伊藤は叫んで、また机に倒れた。
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