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「おはようございます…。あの、秋月さんは?」
秋月がいつも座るデスクに姿がなく、打ち合わせか、会議かと端に座っていた高田に聞いた。
「アポ取りました?秋月さんならさっきまでいたけど?」
素っ気なく言われる。
初顔合わせの飲み会でも博報社の新入社員と紹介された高田は、22歳で秋生より年下なのに、高卒にも下請けにも頭は下げません…という顔をしていた。
「いちいちアポは取りません。取引先じゃないので…。朝一のメールでこの時間に来る事は伝えてあります。」
と秋生が応えると、また素っ気なくチラリと見て言う。
「それ、渡せばいいですか?決まりですよね?戻ったら渡しておきます。
ていうか…俺も担当なんで…別に俺に渡してくれれば良い事ですよね?」
「でも…、秋月さんに最終チェックを……。」
「だから!俺も担当でしょ!下請けの女の子が、上の大卒に意見言うの?
渡せばいいんでしょ?」
強く言われて、カチンとしたが事実は事実。
多少の不安を持ちながらも、渡してもらえるなら…と原案を渡した。
(担当は担当…それはそう…だけど……。)
「では、秋月さんによろしくお伝え下さい。来る事は伝えてありますので、来なかったら変に思われてしまいますから…。」
そこを強く強調する事で、相手に釘を刺す事しか出来ない。
下請け……弱い立場だ。
そして事件は起こる。
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