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佐伯が原案を手に、二人の前に出した。
「微妙に…色が違う。背景だけじゃなく、人物もコピーも。」
佐伯が言い、秋生はそれを手にして見た。
「違います!持って来た原案はこんな色じゃないです!秋月さんに前日、原案と同じ物をメールに添付しました!これを最終案として明日お持ちしますと!それと比べて見て下さい。」
「君ね?そういう事じゃないんだよ!」
部長に指を刺されてしまい、車の中の佐伯の言葉を思い出して謝った。
「申し訳ありません。すぐに変更して届けます!」
と何度も謝り、先輩たちも一緒に頭を下げてくれた。
時折見える、高田の何処か安心した様な顔を、嫌な気分で秋生は見た。
「もういい!これはうちで訂正する!高田、頼む。」
部長が言い、ショックを受けていると後ろから秋月の声が聞こえた。
一際目立つ、背の高い秋月が颯爽と入って来ていて、一瞬、スーパーマンみたいに見えた。
「部長、すみません。遅くなりました。印刷会社には電話しました。
変更を直ぐに届ける事になりました。
メールは昨日の時点で見ました。これとは…随分、違いますね。
何処で変わったかは分かります。t.a企画さんにミスはありません。
これは不在の私のミスで、担当者である残り二人のミスです。
申し訳ありません。」
頭を下げている下請けの3人に、秋月は頭を下げてくれる。
「澤井さん、すぐにこの机で色変更をお願いします。出来たら見せて下さい。
今度はちゃんと私がチェックします。
高田!印刷会社に行く準備して…謝る準備もな?
ミスは仕方ない。けどな!認めない人間はそこから信頼を得られない。
良い仕事は出来なくなる。一緒に謝りに行くぞ。
終わったら、t.a企画さんにも謝罪を!いいな?」
「……はい。」
真っ青な顔の高田が秋月に睨まれていた。
「出来ました!お願いします。」
「……うん、間違いなく。では、行ってきます。高田!」
「はい!車、回します!」
「あの!私もご一緒していいですか?私にも責任はあります。お願いします。
きちんと謝罪させて下さい。お礼も言いたいです。気付いて下さって感謝しかありません!」
秋生が言うと、秋月はくすりと笑い同行を許可してくれた。
この件で、秋生の中の秋月の評価はかなり高くなった事は間違いなかった。
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