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その仕事が2ヶ月後無事に終わり、通常に戻った頃、また社長から博報社の仕事のチームに入れられて、そこから3ヶ月間を、また秋月さんと過ごす事になった。
初めましてから約半年。
二度目の仕事も無事に終わり、秋生は久し振りに一人で、行きつけの飲み屋に立ち寄った。
いつもは早く帰って食事の支度をしなければいけないが、月に一度だけ、確実にしなくても良い日があるのだ。
昨日で博報社の仕事も終わり、大きなミスもトラブルもなく、ホッとしての祝杯をあげるつもりだった。
「いらっしゃい!」
「こんばんはぁ。空いてますか?」
「ごめん!秋ちゃん、今日はいっぱい…。」
「あぁ〜残念。金曜日ですものね…じゃあ、また…。」
「あ、秋ちゃん、今、おでん詰めてあげるから待ってて。今日はあれでしょ?
フリーな日でしょ?家でゆっくり食べてよ。」
「いいのかな?」
「いいよいいよ!」
大将とそんな会話をしていたら、奥の席から声が聞こえた。
「澤井さん?」
「え?どなた……え?秋月さん?」
「おお〜。凄いとこで会うなぁ。良かったらどうだ?座敷!来い来い!」
奥には座敷が3つあり、1番狭い座敷に秋月はいた。
(来い来いって……。狭い座敷だけど、4人は座れるよね?誰かな?)
リラックスする為に入った店のはずが、今やど緊張の危険地帯に見える。
「澤井です。失礼します……。」
お辞儀をして入ると、そこに居たのは秋月ただ一人だけだった。
「おトイレ?ですか?他の方は……。」
「何言ってる?最初から俺一人だよ?ほら、座って!席がいっぱいでさ、座敷で良ければどうぞって言われたからさ。」
「失礼しますよ?知り合いだったの?秋月さんと秋ちゃんは。ほい、秋ちゃんお詫びの奢り。おでん、沢山食べてね。お酒どうする?」
大将に言われて、秋月の顔を見た。
(いつもの調子で飲んだら、駄目だよね?印象が悪くなる。)
「えっと…サワーお願いします。」
「はいよ。」
サワーが届けられて、秋月が取り敢えず乾杯と言う。
グラスを合わせて、半分を飲み、秋月にも大将の気持ちのおでんを勧めた。
「ここ、良く来るのか?」
「ああ、はい。良くというか月1くらいで、仕事が上手くいった時とか、ご褒美に…ですかね?」
「俺と同じだな?俺も仕事が終わった時とか、落ち込んだ時とかに来る。
いつもは誰かと飲みに行ったりするんだけど、ここだけは一人で来る。
お気に入りの店でね?」
ここだけは一人で……と聞いて、席を立とうとした。
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