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その先…。
澤井 秋生という女性と出会い、1年が過ぎた。
半年程前から時々、時間が合えば二人でお互いの共通の行きつけの飲み屋で小さな飲み会を開く様になった。
仕事を依頼している会社の女性と二人で会うのは…正直言えばあまり良くはない。
噂になっても贔屓していると言われても、仕事がし難くなる。
何よりもここは自分には大事な隠れ家で、疲れた身体と心を癒す場所だった。
本当なら彼女とも一度、偶然飲んで終わりのはずだった。
余りにも楽しくて趣味が合って…彼女は気さくで明るくて、仕事の話も必要以上にしなかった。
プライベートな事も突っ込んでは聞かないし自分の事も言わない。
沈黙が続いても苦痛ではなく…目を向けると黙って笑顔を向けてくれた。
気が楽で、落ち着いて…楽しかった。
「ここで飲む時…澤井さんが暇だったら呼んでもいいかな?
澤井さんが飲む時に連絡をしてくれるのも有難いけど…。」
帰り際にそう言ったのは俺の方だった。
お互いの関係はいい友人、飲み仲間、同じ店の常連同士。
それ以上でも以下でもない。
仕事に私情を挟んだ事はない。
ただ、目が勝手に彼女を追うのは……目の所為だよな?
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