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しかし、夕暮れに村へと着いたシーカーズが目の当たりにしたものは……
「…………嘘でしょ?」
村に着いたアイラが呟いた最初の声だった。
シーカーズ5人は、山肌に並ぶ段々畑の先に見える石造りの建物――その扉が豪快に開いている光景を見て目を疑った。
その夕陽に照らされた建造物は、明らかに[ゼルディカーンを封じる祠]に相違なかったからであった。
「私達は覚悟を決めるか逃げを決め込むか、選択を余儀なくされましたねぇ」
リーヴァンがそう言ってハミルとボルドを見ると、ハーフエルフ神官とドワーフ戦士は仲間と祠に背を向けて互いに酒を酌み交わしていた。まるで「見なかったことにしよう」と言いたげに……
そんな中、ホゥクンは一人冷静だった。
「その割には、のどかな風景だ……」
半甲冑姿の戦士の目に写った光景は、その言葉通り、牧歌的なものだった。
祠より下に広がる段々畑では農夫が野良仕事に精を出し、その麓の村では女達が遊びに夢中になる子ども達を窘めながら水汲みや炊事などをこなしていた。
「確かに、邪神が復活した割にはみんな、たぶんですが普段通りの生活をしているみたいですねぇ……」
リーヴァンはそう言いながら、丁度畑仕事から帰ってきた農夫に話し掛けようとする。
「おい、気をつけた方が良いぞ?……もしかしたら、村人は既に、邪神に操られているかもしれんぞ」
「或いは、既に[動く死体]にされているかも知れませんよ?」
ボルドとハミルが掌を返したように忠告するが、純朴そうな呪術師は村人にそのまま問う。
「あの……この村で邪神が復活したと聞いてきたのですが……」
どストレートな質問に、暫し沈黙となる。
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