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3:邪神邂逅
結局、シーカーズは依頼を受けることにした。
正確には――
早朝――
真っ先に起きて先祖の霊に祈りを捧げていたリーヴェンの元に宿の主が知らせてきた。
「神殿から馬車が来ております」
気が付くと、5人はいつの間にやら信徒達に囲まれ、朝食ごと馬車に乗せられ、報酬の前金が詰まった革袋を押しつけられていた。
「どうあっても、俺たちを邪神退治に向かわせたいと言うことらしい……」
袋の中身が間違いなく金貨であることを確かめたホゥクンは、5人に意見を求めるように視線を向ける。
「……邪神復活が事実であれば、見過ごすことは出来ませんしねぇ」
リーヴェンの言葉を皮切りに、相談が始まる。
「前金もらっちゃったし、とりあえず行くだけ行ってみない?」
普段ならば金貨を前にすればにんまりと笑うアイラも、今日は不安そうな顔になる。
その隣で呑気に構えているのはハミルだ。
「まぁ、邪神が本当にいたら私達じゃ手に負えないし、イザとなったら逃げて王都の本部神殿にでも駆け込めばいいんじゃない?」
「遭遇した儂らが無事に逃げられたらの話じゃがな……」
言葉の割に、ボルドもまた、特に恐れることなく朝食のカツサンドをむしゃむしゃと食べている。
「随分と落ち着いていますね、ふたりとも……」
リーヴァンが尋ねる。
「だって、邪神復活が本当かどうか怪しいじゃない?」
「そうじゃ……本当に邪神が現世に姿を現わしたのならば、もっと災害じみた現象が起きても良いはずじゃ……」
世間では仲が良くないとされているエルフとドワーフであるが、人間とのハーフであるハミルと自らの出身に拘りのないボルドは、同じ呑兵衛として意見が合うことが多い。
そしてハミルとボルドの意見は場を明るくする。
特に元気を取り戻したのはアイラであった。
「……だとしたら、今回は楽な仕事じゃない?
だって、様子見て『何もいませんでした』って報告するだけなんだから」
直後、アイラはホゥクンに詰め寄る。
「ねぇ、邪神復活が嘘だったとしても、後金は全額貰えるんだよね!?」
馬車の中に笑い声が響いた。
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