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2:司教の依頼
とりあえず、話だけでも聞こうと考えたホゥクンの意見に従い、少年が乗ってきた馬車に乗り込んだシーカーズであったが……
「この馬車、何処に向かっているのですかねぇ?」
ハミルが革で出来た水筒(中身は酒である)に口を付けながら窓の外を見る。
「たぶん、この道は〈イグリの街〉に続いていると思うよ?」
冒険盗賊故なのか、道に詳しいアイラの言葉に、リーヴェンは、
「その街でしたら、最近、やたらと雨が降るようになったとか」
「その話なら儂も知っている」
と、ボルド。
「去年までは日照りで不作が続いていたらしいが、今年は適度に雨が降り、豊作の見込みだとか……」
「聞くだけなら、良いことずくめの話だが……そんな田舎の街で[世界の危機]とは……」
ホゥクンが隣で気怠そうにしている少年に目を向けると、彼は
――早く用事済ませて帰りてぇ……
となっていた表情を隠すように、
「全ては、至高神のお導きです!」
などと叫び、背筋を伸ばして胸元に印を組む。
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