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プロローグ
シトシトと降り続く雨が、灰色の町を濡らしている。
頭上を覆う傘に雨粒が当たり、ポツポツと雨音が奏でられていた。僕はその音色を聞きながら、酷く緊張しているようだった。
と、不意に銀色に光る刃が視界に現れた。
全身が恐怖に支配され身動きが取れなくなる。
しかし、次の瞬間、自分の中の何かが告げた。
逃げろ―――。
守るのだ、自分を―――。
傘が地面に転がり、アスファルトを蹴り上げる足に飛沫が跳ねる。
ふと、そこにもう一人誰かがいる気がした。
誰かは思い出せない。
ただ、必死に走りながら自分はその誰かのことを思っている。
―――さい、―――なさいっ。
僕は、君を、―――殺し―――た。
遮るものの無くなった雨が、僕の身体を冷たく濡らしていく。
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