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「あ、ねえ」
振り返る久世と目が合った。
「ん?なんだ?」
「ごめん、急に。ちょっと聞きたいことがあって……」
「なんだよ、改まって。気持ち悪い」
どういう反応をされるだろうか。僕はぎゅっと手に力を入れてから口を開いた。
「……及川、つかさのことなんだけど」
「……え」
やはり、彼も何かを知っているような反応だった。田窪ほど怯えたというような状態ではなかったが、明らかに怪訝な表情を浮かべている。
僕は、『ええい、ままよ』といったような心境で一気に続けた。
「やっぱり何か知ってるんだよね?教えてくれないかな。どうして及川は今日いないの?どうして……及川の席すら無いの?」
「お前……何言ってるの?」
「何って、」
何かとてつもなく不気味なモノを見るような目を向けて久世が言った。
「及川は、死んだろ」
僕は一瞬、その言葉の意味がわからなかった。
「……は?」
「及川は、去年、死んでるだろ……」
久世の声が途切れると、周りの音も消え、後には耳鳴りだけが響いていた。
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