イキテレラ(シンデレラ)

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「さあ、これで舞踏会へ行く乗物の支度が出来た。後はそのぼろを何とかしなくては。」とお婆さんは言うと、イキテレラのぼろ服とぼろ靴に杖を当て、それぞれを忽ちこの世の物とは思われない金糸銀糸の縫い取りを散りばめた目も綾なドレスと眩いばかりの光りを放つ美しい靴に変えてしまいました。 「まあ!なんて素敵なんでしょう!」  イキテレラはまるで自分がお姫様になったような気持ちになり、有頂天になりました。  それで嬉しくなる余り足どり軽くバレリーナのように華麗に踊り始めるのでした。 「よし、踊りもばっちりじゃ。さあさあ、早く馬車に乗るが良い。じゃが、言っておくが、舞踏会には夜半の十二時までしかいられないと思え。もし一分でも過ぎようものなら魔法が解けて、この馬車は元の南瓜に戻ってしまうし、馬車馬も馭者も二十日鼠に戻ってしまうし、お供は蜥蜴に戻ってしまうし、服も靴も元のぼろに戻ってしまうのじゃから!」  イキテレラが確と分かったと頷いて馬車に乗り込むと、馭者は馬に鞭打って馬車を静かに発車させました。
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