あなたへ

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 それから彼は私に気を遣ったのか、煙草を吸う時はベランダに出て吸うようになった。  でも、違う。そうじゃない。私が煙草の話をしたのは気を遣ってほしかったからじゃなかった。 「ごめん、違うの。煙草を吸うと体に悪いでしょ?このまま吸ってたらいつか死んじゃうんじゃないかって、不安で、」  彼がベランダで煙草を吸っている時、彼に向かって少し早口でそう言った。  煙草をやめない彼と煙草をやめてほしい私の言い合いは、結局私が折れたことで幕を閉じた。  私の言葉に対して彼は数秒固まった後、ははっと笑って口を開いた。 「大丈夫だよ」  そんな簡単に死んだりしないって、と私の頭をポンポンと撫でながら言った彼の言葉を聞いて、私は涙が零れそうになった。私は本気で言っているのに。 「馬鹿」
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