マサカ探偵のリッチな事件簿

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1  ジェーン・モリアット  三十九歳の時、初めて執筆した推理小説『十日間の殺人』で新人賞を授賞し、作家デビューする。  あらすじはこうだ。  十二名の乗客を乗せた小型船は、酷い嵐に見舞われる。搭載していた食糧や水は日本海に投げ出され、救援も呼べない。しかも、そこはサメが徘徊する危険な場所だ。そんな中一人の男が連続殺人を企てて実行に移した。 クローズド・サークル、連続殺人というだけでミステリ愛好家は心踊るが、モリアットの真骨頂は、その容認せざるを得ない動機とトリックにあると、世のミステリ愛好家たちを唸らせた。 この作家デビューを期に、氏は次々にミステリを執筆し続け、ミステリ愛好家の読者たちを虜にし、世にミステリブームを再燃させることになる。 氏は七十七歳の誕生日をきっかけに、ミステリを新たに執筆し、愛読者たちに挑戦状を送るつもりで、クイズを出題した。それがマサカ・クリスティ少年を島に招待することになった。 名前も顔も知らない『名探偵』と呼ばれる作品の愛読者が、孤島にある館に集まって、推理ゲームで対戦する、読者参加型なぞ解き型ゲームを開催する目的は何なのか?  金持ちの道楽か。  モリアットが、そんな目的で謎ときゲームを開催したとは思えないし、ゲーム開催の裏で生じるリスクも考えているはずだ。謎ときゲームと称して読者を集めてから、一人ずつ殺害するとか、奴隷として働かせるつもりだとか世間では騒がれている。 しかし、モリアットがそんな動機でゲームを開催するはずがないと、マサカは断言出来た。  「ジェーン・モリアットってどんな作家なんだろう」  
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