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カナブンの場合
もう辺りはすでに真っ暗だ。これならチャレンジのし甲斐もあるというものだ。暗闇にまぎれたらまずあいつらからは自分は見えない。存在すらわからないうちに近づき、やつらを驚かせるのだ。
爆音とともにあらわれるやつらが憎い。いままでに何匹もの仲間が、あれのために命を落としてきた。それを今度こそぶち壊してやるのだ。仲間の仇を打ってやる。
あの太陽のように眩しい光がぐんぐん迫ってくると、無性に気合が乗ってくる。
今日こそあいつに打ち勝ってやる。今度こそあのシールドというのをぶち割ってやるのだ。
今まで何度も挑戦し失敗した。「カツン!」と当てることはできても流線型のそいつにうまくいなされてしまう。正面からぶつからないとだめなんだろう。タイミングが重要だ。
今夜も奴があらわれた。ヘッドライトの眩しさにだまされないように注意しながら奴に突っ込んでいく。今度こそ、あのシールドに……。
「痛っ! 何度遭遇しても痛いよな。胸にカナブンって。メットならカツンって当たってそのままなのに。」
くっそぉ、今夜も失敗だった。
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