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パピヨンの場合
菜の花が咲き乱れる青空のもと、心地よい風がおだやかに吹いている。ぽっかりと浮かんだ白い雲がゆっくりと風に流されていくのが見える。おだやかな空気は眠りを誘うようだ。
ここは郊外の高速道路。片側2車線で中央分離帯を挟んだ4車線の一直線。両脇に連なる並木が新緑を青々とたたえている、交通量もまばらなのんびりとした、そんな昼下がり。
わたしはふわふわと飛び出し、それを待った。
時速100キロで突っ込んでくるそいつに照準を定め近づいていく。
くるぞ、くるぞ、くるぞ
ぶつかりそうなギリギリのところで、その丸い物体を空力の整流に乗り、避けて交わす。このスリルがたまらない。まさに命がけのゲーム。どれだけギリギリでかわせるかどうかがポイントなのだ。そのためにあれに近づいていくだけのシンプルな遊び。
アドレナリンが湧き出てきてやめられるわけもない。
次の目標に意識を切り替えて待つ。
時速120キロ、いやもうすこし出ているかもしれない。これはやりがいがありそうだ。
狙いを定めてつっこんで……計算違いだった。そんなこともある。
「うっわああ、やっべえ! 目の前、真っ黄色だぜ。くっそお、モンシロチョウだったな。」
そう。わたしはオートバイのカウルの整流効果を読み損ねて、ライダーのヘルメットシールドにクラッシュしたのだ。
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