こんな恋の始まり

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「あ、あの。ぼ、ぼ、僕とお付き合いしてください!!」 そう言った彼の耳が、月明かりの下でもわかるぐらいに真っ赤になっていて。 ーー食べたい。 不意にそんな衝動に駆られる。 福耳のくせに上のほうは厚みがなくて。 そんなに大きくはないけれど、立ち耳のせいか程よく主張されていて。 何よりもその輪郭がとにかく綺麗で、今まで出会った誰よりも好みの耳だった。 緊張したり、照れたり、ちょっとしたことですぐに赤くなるこの耳が可愛くて。 「えっ、あっ、あの!?」 気がつくと私は彼の左耳に手を伸ばしていた。 ーーあぁ、気持ちいい。 くすぐったいのか、逃げるように身を捩ろうとするけれど、私はもう片方の手も伸ばして彼の両耳を捕らえる。 想像よりもはるかに触り心地がいい。 輪郭をなぞるようにゆっくりと上部のカーブに指を這わせると、なんとも言えない馴染む感じがして、何度も何度も往復してしまう。 熱くて蕩けてしまいそうな耳たぶを、親指と人差し指で摘まむと吸い付いてくるようで、これまた何度も何度も触らずにはいられなかった。 もはや耳だけでなく顔も首すらも真っ赤にして、ぎゅっと目を瞑って耐える姿に、身体の奥のほうからゾクゾクとしたものが湧き上がってくる。 “満月の夜には魔性が宿る” 映画か何かのセリフが頭をよぎった。 彼の向こうには大きな大きな満月があって。 あぁ、そうか。 だからこんなにも大胆に、欲求に正直に、身体が動いてしまうんだ。 「あ、の。もう、限界です……」 ーーあぁ、私も限界。もう我慢できない。 「うわっ」 私は勢いよく彼に抱きついた。 背が低くて私とそんなに変わらないから、丁度目の前に、耳がある。 少しだけ背伸びをして、美味しそうな耳たぶに唇を寄せた。 「ひゃっ」 まったく。いちいち可愛い反応をするんだから。 「いいよ、付き合おうか」 するりと言葉がこぼれ落ちた。 「この耳、一人占めさせてくれる?」 もう一度耳たぶに口付けると、一呼吸おいてから彼は何度も何度も頷いてくれたんだ。 fin
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