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「さてと、、、
今夜から お前はそこにあるソファで寝ろ」
ハッと我にかえったキセは辺りを見回し、
「水無月さんは?」
フロアの真ん中へ行き、皮張りの茶色いソファに触れた。
「俺はこの上のロフトだ」
「僕は水無月さんと一緒でも」
ロフトに行こうとするキセの前に立ちはだかり、入り口のドアを指さす。
「ソファか、帰るか、だ。好きな方を選べ」
途端にクルリと身を返したキセは、大げさに背もたれを操作して倒した。
「なーるほど、これは背もたれを倒せばベッドになる仕組みですね」
スルーしやがって。
「しかしここは、、、二人でも広すぎやしませんか?」
部屋の中央に置かれたソファ以外には、ロフトの真下にあるダイニングを兼ねたカウンターキッチンと、壁に据え付けられたテレビがあるだけのガランとした空間に感心を移した。
「俺には余計な荷物は不要だからな」
皮肉を混ぜた俺の物言いに気づいてか、気づかずか、
「なるほど」
トランクの荷解きを終えたキセは、キッチンに備え付けてある収納を適当に開け、手際よく私物を収めた。
奥にあるバスルームの棚に服を運び終えると、
「夕飯、どうしましょう?」
入り口にあったバッグを部屋の隅に置き直して訊く。
「フリーザーにあるものを好きに食え。
買い物はしなくていい。週に二回、表のレストランから使いが来て、適当に食いもんを詰めてく」
「水無月さんは?」
「出掛ける」
「今からですか?」
「仕事じゃない、私用だ。
ついでに毛布くらいは買ってきてやろう」
「じゃあ、大きめの抱き枕もお願いします」
「、、、、」
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