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「春馬はここに来た時から書籍、ドラマ、映画の中の刑事というものに強い憧れを抱いてました。
、、、ですので、ひとまず生体としての完成を見た時点で彼の願いを叶えつつ、社会性も身に付けさせるため、政府の許可の下警視庁預かりとして外界に出したのです。
少し前までは未知のウィルスによって彼の遺伝子を傷つけぬよう、外出するにも我々の用意した専用車での移動でしたが、今日あなたの車の助手席に乗り、僕に向かって笑顔を見せた春馬は、、、、、失礼」
意外にも目頭を指で拭いた安藤には、確かにキセに対する父親に似た感情があるのかも知れない。
「春馬は特にプロファイリングにおいて、またハッキングにもクラッキングにも才能を発揮するはずです。
僕らが唯一彼に与えてやれなかった、刑事としての社会生活を一度体験させてやって下さい。
その後は、、、」
「戻りません」
再び安藤が伸ばす手から離れたキセは、今日この建物に入ってから初めて口を開き、俺の側にぴたりと寄り添った。
そして、
「研究所での生活は楽しかったです。
ですが僕はここにはもう戻りません。
これからは水無月刑事と寝食を共にして、
立派な刑事として生きて行くのです」
俺を見上げ嬉しそうに笑った。
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