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そう長くない間を挟んでキセは口を開いた。
「僕は、、、実は三歳の時に家族から離され、そこから国の研究所で育ったので警察学校の成績も卒業資格も、研究所の中で得ました。
実家は確かに魚屋ですが、今も店をやっているかどうかは、、、」
渡した地図を受け取り、両手で握りしめて下を向く。
「魚捌けるって言ってたよな」
「三歳までは母に抱かれて父の仕事を見てたので、、、」
三歳だと、、、
「俺に嘘をつくな。
三歳の頃に見た記憶だけで魚捌けるかよ」
思わずキセの前髪を掴んで顔を仰向かせた。
「ほ、本当ですっ。
側で見てたのでマグロだって捌けますっ」
「研究所に連れてかれた きっかけ」
「い、痛いです、、、」
「話してみろ」
「さっ、三歳になる少し前、真鯛を捌いてた父が寄生虫を見つけたんです。
父がそれをディディモゾイドだと言うのを耳にして、魚に棲みつく虫がいるなんて面白いって思い、その日のうちに親のタブレットを使って寄生虫の名前をほとんど覚えてしまったんです」
「で?」
「文字を読み書きし、突然画面を操作する僕を見た両親は驚き、そのまま大学病院に連れて行って いろいろなテストや検査を受けさせました。
数日後、政府関係者だと言う人が二人家にやって来て、両親と話し合った末、翌月には僕を研究所に連れて行ったんです。
、、、両親とはそれきりです」
キセは早口で捲し立てるように言うと、
「水無月さんは見たことあります?
ディディモゾイド」
両親と離された際の鮮明な記憶が辛いのか、俺の気をそらす為か、目を丸くして無理に笑った。
だが、
「いぃや」
完全に正体を現すまでノッてはやれない。
「これがですね、極小さくてですね、生きている時は黄色で死ぬと黒くて固い棒状に変化するんですよ。、、、全く興味深いのです」
「ほぅ」
「今度真鯛を買ってきて一緒に見つけてみませんか?」
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