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車中、
散々脅しても研究所の所在を吐かないキセに、
『実体を知り、俺が納得すればお前を返すことはしない』
と言質を渡し、ようやく『研究所』の成りをした建物へと案内させた。
しかし、厳重に閉ざされた門に車を寄せただけで警備棟から数人の男達が姿を現し、
「通行許可証又はご用件を」
と助手席から俺達を覗き込んだ。
そいつらを押し返すようにキセの頭を助手席の窓から突き出させ、
「コイツが許可証だ。
足りなきゃ車のナンバーでも控えて警視庁に問い合わせろ。
俺は警視庁捜査一課の水無月浩一だ」
と押し通せば、ものの数分で門は開き、先導する車を追尾する形で広大な敷地の奥へと向かった。
全面ガラス張りの建物の前に車を停めると、いかにも研究者という風体をした男が小走りで建物から出て来、やはり助手席の窓に手を掛け中を覗き込んだ。
「春馬、大丈夫か?」
男を認めた時点でキセは笑顔を見せ、すぐに申し訳なさそうに口を開いた。
「はい。
ですが規約を破り、研究所のことを話してしまいました。
お父さん、水無月刑事にここでの環境と僕らに関する説明をして下さい」
「『お父さん』だぁ?」
改めて見た男は白衣の上に微笑みを湛え、キセに向かって何度か頷き、俺には冷えた目を据える。
「水無月、、、さん、でしたか?
私はここで春馬の父親がわりをしてました研究員の安藤です。
彼の立場上、警視庁への照合は致しませんが、、、今日ここで見た事を一切口外なさらないと約束して頂ければ、特別に中をご案内します」
「いいだろう。
但し包み隠さず見せてもらうからな」
頷いて助手席のドアを開けた安藤はキセが裸足であるのに気付き、本人に向かって、
「本当に大丈夫なのか?」
と再度訊き、明らかな不快感を示した。
「今後は春馬の扱いに細心の注意をして頂くことも約束してもらいます」
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