あの子を探して

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一方、その頃。 とある密室…モニターの光だけが頼りのカンヅメの世界。 そこに、大勢の人間が気を失って床に投げ捨てられている…それに目もくれず、ひとつのモニターに釘付けの人間がいる。 「虚構からの嘘や空想も、手入れを繰り返し血が通えば…真実と同じ重さを持つ。 七海荒らしも、虚構から真実を掴んだ男。 今や、七海荒らしが彼のもうひとつの名前に近い…いくら投げ捨てても逃れきれないわね。」 声からして、高校生ぐらいの女生徒のようだ…かなり声が甘いが。 いくら名前を生み出しても、逃げられない…人は意味に縛られる。 虚構から生まれたとしても、未来に何かを託して名前に意味を込めるとしたらそれには真実と同じ重さがある。 虚構も現実も、人が生きる場所なれば…そこに何かしらの意味を託す。 それが人を導き、人はそれに囚われる。 要は、導き出された結果なのだ。 「…とりあえず、餌は撒いた。」 このゲームを使って、少女が何をするのかは分からない。 デスゲに囚われた人間を助け出そうとする酔狂な人間がどこまで行けるのかという期待から始まり…スポンサーの意向を汲んで人類の支配とか破滅の異能力開発技術の実験にも立ち会い。 むしろ、本人の自意識が非常識な虚構に押されかけているあたりで彼女本人の目的を洗い出すのはなかなか難しいところがある。 様々な人脈に絡みつき、壊れた自我…彼女にはそういった紹介が正しいのだろう。 それは蓮柊ちゃんという、妹分にも絡む。 リアルの深い付き合いからして彼女からはたくさんのものを受け取った…それは、彼女の概念が少女の自我の一部を作ったかのように。 「あの子が、いなくなった。」 ゆえに、時々彼女も己を保つかのようにそう呟く時がある。 右手にバチバチと…軽い静電気を纏わせたまま。
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