あの子を探して

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そこまで読んでいたら尚更普通のゲーマーっぽくない。 やっぱり、行方不明のこのゲームのデバッガー(ゲームのミスやバグなどのチェックをして取り除く人)のスカウトの線すら疑う…何か裏社会っぽい話に近い…これこそ荒唐無稽だが。 「ずいぶん、知りすぎじゃないの。」 俺は女に言った。 やはり、警戒体勢は抜けない…修羅場を生きた闘いの性が抜けない。 「弟が、このゲームにログインした。 なりふりかまっていられないの。」 理由を口にした女らしき者は必死だった。 「…あのなぁ、嘘ならもう少し…。」 「嘘じゃないわよ!」 普通なら、それは大変だ俺と組もうになるのだが…生憎とそういう返事はあまりにも月並みなのだ。 このゲームは、どこをどうやったのかネットの各地にたくさんの入り口があってそこから次々にこのゲームに人が飛び込んでおり…小学生に対する弱いものイジメを目的とした内弁慶な変質者を含めて今やユーザー数は5000人。 多種多様な理由で集まったユーザーの目的は様々で、すべてが信用出来る相手ではないというか面識すら薄い赤の他人。 俺はゲーマーとしての矜持を守るため、この団体をすべてかいくぐり…100人の子供を引き連れて地図の無い未開の土地を歩き回り出口を探さねばならないのだ。 仲間とか、やってられん…視覚の効かんゾーンとて進入禁止ではない。 暗闇が何だ…モンスターが何だ…ソロプレイヤーをなめんなよ。 俺は暗闇に近い、駆け足で森の中に飛び込もうとした。 とりあえず勘だ…勘で乗り切れば…。 ゴォッ!! だが、炎が後ろから飛んでくる。 「…あんた、よくそんなプレイスタイルで生きてこれたわね。」 後ろの彼女が俺に向かって止めるために魔法を放ったのだ。 「いや、中の戦闘経験はあるんで…こっちにはログインしたばかりだからレベルはまだ一桁だけど。」 いつも無茶なレベルの狩場に突っ込んでいたからな…退路だけは確保していたけど。 「…呆れた。」 女らしき者はため息をついたが、俺はいつも通りだった。 「ゲームはな、時に無茶をすればするほど強くなるんだよ。」 虎穴に入らずんば、というやつだ。
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