あの子を探して

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「全くもって、おかしい話ね。」 先手必勝の切り込み役を、バッサリ切り捨てた。 「俺の体験談だから、良いんだよ。」 そう、答えて森の入り口からかすかに聞こえる足音に耳を傾ける。 我ながら、聴覚がウサギ並みだな。 「…この先に誰かいる?」 「二人…仕掛けるか?」 二人の焦る子供のような声が近づく…そこから想像するに、森の中に複数の犯罪者がいて子供を捕まえたはいいが誰が相手をするかでモメるや同士討ちに発展し…そのスキをついて逃げ出したというところか。 危険な森の中からならば子供は大抵走って飛び出すし…忍び歩きしながら外をうかがうってことは、森の中には危険は存在しないってこと。 近くの町に住むNPCから、犯罪者がここに子供を何人か連れ込んだという目撃情報のウラは取ってはあるから…子供たちのアジトという線は消える。 二週間ほど前から新規ログインしたばかりだから、全員のレベルはだいたい同じ…すぐにPK がやりたいなら前のゲームプレイのキネヅカを使うか数を集めて押すしかない。 そうなると、学校に行ったり親に宿題やれと言われたりして大人よりゲームの時間が足りない子供たちが勝てる確率が低くなるから…敵の同士討ちからくる自滅という考えに至ったりする。 もちろん、俺はキネヅカでソロで救助可能だと信じていたが。 とはいえ、これは非常にマズい。
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