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「な、なんなんだこの疲労感は…!」
無事にリーマンに取り憑いた俺は驚愕した。
取り憑いたこいつの身体は、全てにおいてのコンディションが最悪だった。
こいつの中にいると、頭が働かない上に身体が非常に怠い。こんな状態で何でこいつは今まで生きていたんだ。そんな疑問が頭に浮かんでくるレベルだ。
正直、それくらい酷い有様だった。これならまだ憑かない方がマシかもしれない…!逆に妖力を吸われちまう気がする!
絶望しながら俺は頭を抱えた。
その瞬間、袋が嵩張る音が鳴った。そこから良い匂いがする。俺はその匂いに釣られるように袋から箱を取り出してフタを開けてみた。
中を確認して俺は目を輝かせた。
「これは…稲荷寿司じゃねーか!」
此奴も中々使えるじゃねーか!稲荷寿司なんてセンスが良い。
俺は早速供えられていた箸を持ち、稲荷寿司を掴んだ。
「しかもこれは出来がいい。供物は大抵湿気ちまってるからなー。これはいい。稲荷寿司が傷む前にこの俺様が食ってやろう」
そうだ、こんな死にかけリーマンが食うよりその方が稲荷寿司も喜ぶ筈だ。俺は嬉嬉として稲荷寿司を頬張った。
「う、うんめぇ〜!!やっぱりこういうのは、出来立てが一番なんだよな!」
美味い美味い!俺はガツガツと稲荷寿司を口に運んだ。これだけで取り憑いた甲斐があるというものだ。
最後の1つを平らげた俺は、ふぅっと一息ついてから同じく袋に入っていたペットボトルのお茶を飲む。
「さて、これからどうしたものか…。こいつは長く持たねぇだろうけど、アテもねぇし暫く取り憑くしかねぇよなぁ」
本当ならこんな野郎より、強いて言えば巨乳の美女の方がいいんだが…。
贅沢も言ってられない、俺は仕方なくこいつの身体に取り憑く事にした。
半年もありゃ別の人間が見つかるだろ。
俺はそう思いながらこいつの首元の噛み跡をなぞった。
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