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お狐様
俺は家に帰って深呼吸をした。
そして、おばさんから貰った御守りを鞄から取り出し、先程の会話を思い出す。
『これを首にかけなさい。そうすれば妖狐を追い出せるはずです。ちなみに値段は8万円』
『…たっか…!今すぐATM行ってきます!ちょっと待ってて下さい!』
特にお金を使う機会もない俺は迷わずに買ってしまったが、これは騙されたのかもしれないと俺は後悔していた。
橙色の御守りには緑色の勾玉が飾られている。一見なんの変哲もない御守りだが…本当にこれで身体から狐を追い出せるんだろうか。
買ってしまったのなら後悔しても仕方がない。俺は取り敢えず首に御守りをかけた。
すると、辺りにぶわっと一瞬だけ風が吹き、身体から何かが抜けていく感触がした。
「あ…、なに、あぁ…っ」
それが妙に変な感覚で、俺は思わず情けない声を出す。魂を引き抜かれるような、大事な半身を失ってしまうような。
自分の中で何かが蠢いている。気持ちいいのか気持ち悪いのか分からない境目が曖昧な状態に酔わされそうだ。早く終わってくれと願いながら俺は首にかけた御守りをぎゅっと両手で握った。
暫くの変な状態の後、身体から自分に栓をして息苦しくしていたコルクがポンっと抜けるような感触を感じ、俺は謎の疲労感でへなへなと床に座り込む。
「あ…」
そして、俺は目の前には本当に狐がいる事に気が付いた。
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