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あなたが好きだと言ってるじゃない〜承〜3
*
あれ以来、原くんとまともに顔を合わせられなくなっていた。
昼休みも時間をずらして食堂に行った。
こんな風に避け続けるのも良くないとわかっていても、原くんに逢うのが恐かった。
今年はこの病院に研修医で来たのは、原くんとボクの二人だけだったから、普通に同期の友達でいたかったのに・・・。
資料室で部長に頼まれた本を探しながら、ボクは溜め息をついた。
今日は部長が学会で発表する論文を書くので、その資料を資料室から持ってくるように頼まれた。
外来の診察は今日はお休み。
久しぶりにゆったりとした日だった。
渡されたメモを頼りに、何処に何があるのかよくわからない本棚を行ったり来たりする。
でも、ここにいれば原くんと会うこともないから、気が楽だな・・・。
資料室は学校の図書館みたいに、本棚が等間隔で並んでいる。
壁にもずらっと本棚が並んでいて、唯一の机が出入り口のドア横にあった。
そこに棚から取り出した本を積み重ねていった。
あと2冊探し出せば終わるという時に、ドアがノックされて、部長が入って来た。
「花織、見つかったか?」
きっとボクが遅いから様子を見に来たのだろう。
ボクは本棚の影から飛び出して、机のところにいる部長に駆け寄った。
「すみません、あと2冊です」
「ふうん」
部長は机に積み重ねた本を手に取り、パラパラとめくった。
長身の部長を見上げる。
整った顔立ちと思慮深い瞳に見惚れていると、不意に部長が本からボクに視線を移した。
目が合ってしまい、恥ずかしくなって思わず俯(うつむ)いた。
顔が赤くなっているのが自分でわかった。
原くんにボクの気持ちを見抜かれていたことがわかって以来、まともに部長と目を合わせることも出来なかった。
部長にも気付かれてるのかもしれない・・・!
そう思うと、どうしても恥ずかしくて、目を見て話せなくなっていた。
俯いたボクに部長が、
「その眼鏡・・・伊達なんだろう?外したら?」
と言って、長い指でボクの眼鏡を外してしまった。
ボクはびっくりして思わず顔を上げて、
「あの・・・返して下さい」
部長の手の中にある眼鏡に、手を伸ばした。
部長は眼鏡を机に置くと、ボクの腰に腕を回して抱き寄せる。
そしてボクの長い前髪を、もう一方の手でかきあげた。
「ほら、こんなに可愛いんだから、隠したらもったいないだろう」
「部長・・・?!あの・・・」
部長がこんなことをする理由がわからず、ボクはただ顔を真っ赤にして、おどおどしているだけだった。
部長は、面白そうにふっと笑うと、前髪をかきあげた手をそのままボクの後頭部に移して、引き寄せた。
部長の顔が近づいてくる。
と思った次の瞬間には、部長の口唇がボクの口唇を塞いでいた。
頭が真っ白になった。
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