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「あー。あの面倒なやつな」
四郎が俺の肩越しに日誌に手を伸ばす。まだ書き終わっていない日誌が攫われてしまった。
「まだ書き終わってないんだけど……」
俺はノートに手を伸ばしたものの、あっさり避けられてしまう。
四郎は後ろにあった机に座り、パラパラとページを遡っていった。
「相変わらず暦の字はきれいだよな~」
どうやら過去の俺が書いたページを探していたらしい。
クラスの違う四郎は、この日誌を見る機会がないから、余計に気になったのかもしれない。
「四郎の字の方がきれいだと思うけど」
幼少期から習字を習っていた四郎は、とても字がきれいだ。俺はそんな四郎が羨ましくなって、四郎にきれいな字の書き方を教えてもらったことがある。けれどあまり上達はしなかった。
俺は四郎にノートを返してもらうと、さっさと続きを書き終えた。
「それで、どうしてここにいるの?」
俺は書き終わった日誌を閉じると、帰る支度を済ませる。
鞄を持って教室を出ようとすると、四郎も付いてきた。
「一緒に帰ろうかと思ったから」
ニッと笑った四郎は、鞄を教室に置いたままらしく、俺が職員室に向かう間に鞄を取りに行った。
俺は開いていた職員室のドアをノックすると、自分の名前とクラスを言い、担任を呼ぶ。
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