第1章

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「あー。あの面倒なやつな」 四郎が俺の肩越しに日誌に手を伸ばす。まだ書き終わっていない日誌が攫われてしまった。 「まだ書き終わってないんだけど……」 俺はノートに手を伸ばしたものの、あっさり避けられてしまう。 四郎は後ろにあった机に座り、パラパラとページを遡っていった。 「相変わらず暦の字はきれいだよな~」 どうやら過去の俺が書いたページを探していたらしい。 クラスの違う四郎は、この日誌を見る機会がないから、余計に気になったのかもしれない。 「四郎の字の方がきれいだと思うけど」 幼少期から習字を習っていた四郎は、とても字がきれいだ。俺はそんな四郎が羨ましくなって、四郎にきれいな字の書き方を教えてもらったことがある。けれどあまり上達はしなかった。 俺は四郎にノートを返してもらうと、さっさと続きを書き終えた。 「それで、どうしてここにいるの?」 俺は書き終わった日誌を閉じると、帰る支度を済ませる。 鞄を持って教室を出ようとすると、四郎も付いてきた。 「一緒に帰ろうかと思ったから」 ニッと笑った四郎は、鞄を教室に置いたままらしく、俺が職員室に向かう間に鞄を取りに行った。 俺は開いていた職員室のドアをノックすると、自分の名前とクラスを言い、担任を呼ぶ。
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