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駅に着くと、走って改札を抜ける。ちょうどホームに電車が入ってきたのだ。
俺は四郎と違って足が遅い。それをもどかしく思ったのか、四郎が手を引いてくれた。
「はぁ。間に合った……。ありがとう」
「ふぅ。相変わらず足遅いなぁ。体力はあるのに」
「四郎が速いんだよ」
俺は四郎に苦笑して、空いている席に座る。
四郎も俺も、中学の時は運動部だったため、体力だけはある。
四郎は陸上部だったから足も速い。種目は短距離で、中学の時に学校の新記録を叩き出していた。
小学生のころは足が速かった俺も、陸上部に入ろうかと体験入部に四郎と行ったのだけれど、陸上でやっていけるほどに足が速くなくて、あっさりと諦めてしまった。そして入ったのは卓球部。個人種目では結構いいところまではいったのだ。
高校生になってからは、2人とも部活に入っていない。そのまま高校3年になってしまった。
「なぁ暦」
「ん?」
四郎の顔からは、さっきの公園での暗さは消えていた。感情の切り替えが早いのは、昔から変わらない。
「暦はもう進路決めたか?」
「まだ何も。たぶん、就職じゃないかな?」
俺は正面の夕日を見ないようにしながら答える。眩しすぎて目がチカチカするから、夕日は得意じゃない。
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