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俺たちの家は、駅から5分ほど歩いた先にあるアパートの2階だ。奥の突き当りが俺の家で、その隣が四郎の家だ。
「ただいま~」
「おかえり」
家に帰ると、電気の付いていないリビングから声が聞こえた。誰もいないと思っていたから、少し驚いた。
「ね、姉ちゃん。何で家にいるの?」
既に社会人の姉である日和は、この家を出て一人暮らしをしている。だからこの家にはあまり帰ってこない。
両親は共働きだし、いつもはこの時間には誰も帰ってきていないはずなのだけれど。
「何かあった?」
「いやぁ、久しぶりの家は落ち着くね」
俺の質問に答えない姉は、リビングのソファーに寝ころんでいた。
何をするでもなく、ただ天井を見つめている。何かあるのかと、俺も天井を見上げてみたけれど変わったところは何もなかった。
仕事が上手くいっていないとか? 俺の知らない間に出来た彼氏と上手くいってないとか?
俺は心配になって、ソファーに寝ころぶ姉をじっと見る。しかし、姉が何かを話す気配はなかった。
「こよちゃん。お母さんたちは?」
「えっと、父さんは今日は夜勤。母さんは飲み会って言ってたと思う」
いきなりの問いに俺は慌てて記憶を思い起こして答える。
それを聞いた姉は、そう、と呟いて瞼を閉じてしまった。
やっぱり何かあったんだ。そう確信したけれど、俺は何も尋ねずに自分の部屋に向かった。姉はきっと休息が必要なのだ。姉が話したくなるまでは無理に聞き出さないでおこう。
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