お客様との別れ

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お客様との別れ

検査の結果が出るまでがとてつもなく長く感じた。つい数日前のことなのにどんな風に過ごしていたかはハッキリ覚えていない。 ―がんだったらどうしよう、きっとがんだ。いや、もしかしたら何かの間違いでただのしこりができているだけかもしれない。 にしてもこの痛みは取り除きたいからどのみち手術はしないといけないだろう……。 仕事が休みの日は一日この繰り返しで、でもネットで色々調べ過ぎないようにただ少し気になることだけを調べては寝て、ご飯を食べる気も作る気も失せていたが、食べないと元気が出ないので自分が食べたいと思った物を無理矢理にでも食べるようにした。 結果を聞きに行くまでに2日程仕事が入っていたのは精神的にはしんどかったが、かえって気が紛れてよかった。 常連さんにお仕事の関係で遠方に転居される方がいて、私の出勤の日に店に顔を出してくれた。9ヶ月の女の子のママだ。 『今まで本当にお世話になりました。』 深々と頭を下げる姿見ながら 「こちらこそなんですよ~」 そう言うと 『この子が歩いたら、ゆんさんに写真を送ってもいいですか?お店宛で。も~最近すごく動くからぁフフ…すぐなんだろうけど』 と嬉しそうに話してくれた。 その時「あの…私実は病気が見つかって…もしかしたらしばらくお店には……」 と言いかけたが、そのまま言葉を飲み込んだ。 泣きそうになるのを我慢できず 『そんな風に言っていただけて……ごめんなさい、最後に泣いてるとこ見せたくなかったんですけど……ありがとうございます。すぐですよ、きっと。すぐ走り回るようになります』 私が泣いた顔を見てその人も涙ぐみ 『ホントに寂しくなります……また、ゆんさんに会いに来ますね。』 そう言って優しく笑い、手を振ってお店を出て行った。 もしかしたらこれが最後になるんじゃないだろうか…。 そんなことばかりを考えてしまう。 この時の私はまだ前向きに考えることができなかった。
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