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告知
7月5日、検査の結果を聞きに行く日がついに来た。
夜勤明けの旦那さんと病院で待ちわせをして一緒に話を聞くことにした。
旦那さんの方が約束の時間よりも早く着いていて総合案内の前でキョロキョロしながら立ってる姿が見えた。
予約をしていても相変わらずの混みようで、予定時刻から余裕で30分、1時間と過ぎていく。
「お昼何食べる?」
『なんでも食いたいもんでいいよ』
そんなたわいもないいつも通りの会話をしながら自分の番が来るのを待った。
今この待合に座っている人達は私と同じ不安を抱えた人達なんだろうな…。
そう思うと、一人じゃない気がして変に心強くなり、自分はがんじゃないんじゃないかとすら思えてきた。
「なんともなくて良かったね~心配かけてごめんね」と言いながら大好きなお寿司を食べることだけを考えていた。
なんともないにしても、また違う病院でも診てもらうつもりではあったから、頑張るためにすみっコぐらしのぬいぐるみを買ってもらう約束もした。
「どこに買いに行こうか~?」
そんなことを話しながら、もう自分が何をしにここに来たのか忘れるくらい時間が経った頃、ふいに自分の番が回ってきた。
少々浮かれ気味の軽い気持ちで診察室に入る。
「検査の結果、異常はありませんでした。」
そう言われてお礼を言ってすぐ診察室を出る予定だった。
『ご主人様もどうぞお掛けください』
神妙な面持ちの先生が続けてこう言った
『検査の結果……残念ながらやはり乳がんでした……』
自分のことを言われてるというよりはどこか他人事のように思えて、まるでドラマのワンシーンを見ているようなそんな気分にもなった。
信じ難いが、とりあえず先生の話に返事をする。内容は頭に入ってこなかった。
『がんのことについてなにか調べましたか?』
「いえ…とくには……」
『そうですか……乳がんにも色々な種類があって……』
ゆっくりと丁寧に乳がんについて説明をしてくれていたが、何を言われているのか全くわからなくて、そんなことよりもこれから私はどうなるのか、そのことだけが気になった。
机の上に置いてある診断書に目をやると、なにやら難しいことが書いてあり、その中にかっこ書きで(悪性腫瘍)と書いてある文字が目に飛び込んできた。
その短い言葉に自分の病気ががんであることを改めて気付かされた。
一通り先生が説明した後『もしかしたら、脇のリンパにも転移があるかもしれません……』と言った。
先生が言い終わってすぐ
「これって……治るんですか……助かるんですか?」
こんなようなことを聞いていたと思う。
『私達は完治を目指すだけです。』
……完治…リンパに転移していて完治とかありえるんだろうか。
先生曰く、また詳しい検査をしてどのタイプのがんかわかったらそのがんに合わせた投薬や治療を始めるとのこと。その薬がよく効くとも言っていた。
もうここで治療を受けてもいいようにも思えたが、一つのところだけでは不安ということと、ネットで調べて手術件数の多い名医がいると評判の病院に移ることを決めていた。
「前にも少しお話したのですが、違う病院で治療を受けようと思うのですが…」
そう言うと
『大丈夫ですよ。治療をどこでするかは患者さんの自由ですので。今はいろんな病院が連携を取っているんです。こちらからその病院の予約を取ることもできます。紹介状とデータの準備を急いでします。おそらく……今日の夕方までには準備できるのでお渡しは来週の月曜日になってしまいます』
と、残念そうではあったけど、とても親切に答えてくれた。
『今からそのお手続きと受け取りの場所を案内しますので』
そう言われた後に、検査の時にお世話になった看護師さんが『ちょっと待合でお待ちくださいね』と優しく声をかけてくれた。
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