愛しい君

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梨乃「ゆうちゃ…おかえり…ゆった…」 そう言って祐を見つめる梨乃の瞳は彼女の幼い頃と同じだ。 祐「よくできたね、梨乃。」 梨乃「…ごほうび…ちょーだい…」 祐「…クスッ……分かったよ…」 その瞬間、あろうことか祐は梨乃の頬にキスをして―― (…え……ちょ……) 梨乃「ありがとっ」 そう言って満面の笑みを祐に向けると、また祐の胸に甘えるように頬を擦りつけた。 祐「ほんとに梨乃は甘えん坊だ。誰かさんと一緒だね?」 祐は梨乃の髪の毛をやさしく撫でながらキッチンの方へと目をやった。 愛「…だ…誰のこと……」 自分のことを言われているのだろうと感じた彼女は焦るような口調で料理を運ぶ。 祐「本当に似てきたよ。ん…こんなカンジじゃ力も心配が増えて大変だね?…クスッ…」 俺の心の内を見透かすように意味深に俺の顔色を伺う祐。 力「ま…まぁ、心配つーてもなぁ…」 俺は必死で平常心を保とうとしていた。 梨乃はもうすぐ四歳になる。 だが、結婚なんてまだ先だし心配なんてするには早すぎる。 だけど、これだけ彼女に似ていて可愛いとなると虫がつくのも案外早いかもしれない?! 祐「そうかなぁ。すぐだと思うよ。ね?愛梨?」 祐は彼女にもまた意味ありげに話を吹っ掛けた。 愛「…え…と……」 祐「ん、幼稚園の頃さぁ、結婚するとか愛梨言ってたじゃない?梨乃だともう来年だよ。そろそろ連れてくるんじゃない?好きな子とか…クスッ…」 考えてみれば祐と彼女が結婚する約束をしたのは五歳頃だった。 となると、このませた梨乃もそろそろ言いかねない。 祐「梨乃は愛梨の小さい頃に本当にそっくりだよ。性格も近いものがある。ねぇ…梨乃?梨乃は好きな男の子はいないの?」 あろうことか祐は梨乃にそんな話を振った。 力「いるわけねーだろ。」 代わりに俺が即答しておいた。 ところが、それに反して梨乃が思わぬことを口走って―― 梨乃「…いるもんっ…」 梨乃のそのセリフに彼女もまた俺たちの元へとやってきた。 愛「えっ……うそ……梨乃、好きな子いるの?」 彼女も娘の好きな子には興味津々のようだ。 愛「えっと……んー…スクールの子…とかかなぁ?」 梨乃は日本人学校の幼稚園に通っている。 だから出会うとしたら日本人しか考えられないのだが。 梨乃「ううん…ちがうよ…」 愛「え?違うの?」 梨乃「だって……みんな……こどもみたいだもんっ…」 まるで自分が大人だとでも言うようなセリフに俺たちは顔を合わせて思わず笑ってしまう。 力「…クッ……梨乃も子供だろ?」 梨乃「りのはあんなこどもじゃないもんっ」 子供扱いされるのが嫌なのだろうか。 まるでそれは彼女のようだ。 祐「…クスッ…だよね?梨乃は子供じゃないよね?ん…じゃぁ誰なのかなぁ?」 そう言って祐は梨乃に優しく問いかける。 すると、梨乃は祐の腕の中からそっと顔を出し、祐を見つめて――… 梨乃「…ゆうちゃ……すき…」 力「…っ……」
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