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俺が必死にご機嫌取りを始めて十数分……
「分かってくれればいいんですよぅ」
ニパッと犬歯を覗かせ笑いながら少女は言った。もう地が出てやがる。今までも長続きしてなかったとは言え、1番早いんじゃないか?
こういうのが将来男を泣かす悪女になるんだろうなぁ。ああ、末恐ろしや。
「……で、今回喚ばれた理由は?」
5回目ともなれば本題に入るのもスムーズだ。その前段階でやけに無駄な時間を使った気がするが、あくまで気のせいだと思いたい……
「!はい、実は魔王軍の大群が我が国との国境沿い近くに急に現れまして……」
「魔王軍って、あの魔王のオッサンとこの?ちゃんと和平は結んだハズだろ?なんか問題でも起きたのか?あのオッサンがいきなりそんな事するとは思えないし。」
「あの、それがですね、最近代替りしたみたいなんです。誰が継がれたかは判明してないんですが、その跡継ぎの人……と言うか魔族の方が和平を破棄するんじゃないかという噂がちらほらと……」
「おいおいマジか、大問題だろソレ……あのオッサンも後継の教育ぐらいしっかりしとけよなぁ」
「と言うわけで、ユウヒ様のご助力が必要になったわけで……」
なるほど、それは召喚されるのも仕方ないのかもなぁ。魔族は敵に回すと中々手に負えないからなぁ。
「しゃーない!とにかく詳しい話は王都に戻ってからだな。さ、行くぞ」
「は、はい!よろしくお願いします!」
「で、王都までどんぐらいあんの?」
「はい、走って3時間程です!」
……いきなり心折れそう。
「……1ついいか?人狼なお前は体力に自信あるかもしれないけどな、……俺は、俺は人間なんだよぉぉぉぉ!」
……俺が少女をまた泣かしそうになったのは言うまでもなかった。
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